債権法改正に対応できていますか?

平成29年(2017年)5月26日、民法の一部を改正する法律が成立し、翌6月2日に交付されました。

本改正は、債権法の規程を中心とするため「債権法改正」と呼ばれ、実務への影響が大きいものです。明治29年(1896年)の民法制定以来の大改正ともいわれています。

 

このような大改正は令和2年(2020年)4月1日に施行され1年6月が経過しようとしています(本稿執筆時:令和3年(2021年)10月)。


しかし、日頃の業務に忙しい中小事業者の皆さんは、本改正をフォローできているでしょうか?

少し難しいかもしれませんが、我慢して最後まで読んで下さい。
なお、本稿では改正後の民法のことを「新法」と呼びます。

 

1 改正点

 

 上記のとおり、今回の改正点は多岐にわたっています。主な改正点(新設含む)を列挙すると、消滅時効、法定利率、保証、債権譲渡、定型約款、意思能力、意思表示、代理、債務不履行による損害賠償、契約解除、売主の瑕疵担保責任、原始的不能の場合の損害賠償、責任財産の保全、連帯債務、相殺、債務引受、弁済、契約の基本原則、契約の成立、危険負担、消費貸借、賃貸借、請負、寄託と24項目もあります(法務省民事局「民法(債権関係)の改正に関する説明資料」より)。


 この中には事業者の皆さん一般に広く妥当するものもあれば、特定業種にのみ妥当するものもあります。例えば、消滅時効については事業者一般に妥当するものですが、保証については、通常は金融機関のみに妥当するものでしょう。ただ、借入をする場合には新法が適用されることになりますので、その意味では事業者一般に妥当するものと考えるべきかもしれません。

 

2 施行日、新法の適用

 

 新法の施行日は、上記のとおり、令和2年(2020年)4月1日ですので、新法が適用されるのは、原則として、施行日である令和2年4月1日以降に締結された契約、施行日後に発生した債権についてです。
ただ、施行日前に締結された契約についても新法が適用される場合があるので注意が必要です。例えば、施行日前に締結された契約が、自動更新条項に基づき更新された場合は、新法が適用されます。また、大量の取引について画一的な取引条件を定めた定型約款に関する規定は、原則として、施行日前に締結された定型取引にかかる契約にも適用されます。他方、自動更新された契約に付随して締結された保証契約については当然に新法が適用されるわけではありません。


このとおり、施行日の前後で機械的に適用の有無を判断できるわけではありませんので注意が必要です。(実際はもっと細かい規定があります。)


 なお、継続的な取引関係がある場合、基本契約を結んだ上でここの取引については個別契約を締結する例も少なくありません。この場合、基本契約の締結が施行日前であっても個別契約が施行日後であれば、個別契約には新法が適用されます。この点も注意が必要となります。

 

3 対応

 

 では、新法適用の有無がわかったところで、どのような対応が必要となるでしょうか?新法が適用されるのに使用されている契約書式が旧法時のものだったとすると、改めて取り交わしが必要となりますし、それに際して契約の相手方との交渉や協議等が必要となることも考えられます。上記の自動更新条項に基づく更新がなされた契約についてはこのパターンに当てはまりますね。


 また、用意されてる契約書式が旧法時のままだとすると新法に則った内容に修正する必要があります。自社での修正が難しいなと感じられる場合は早期に専門家に相談されることをお勧めします。


 この他、マニュアルや会社の内規の見直しも必要となるかもしれません。
 新法は既に施行されていますので、こういった作業がお済みでない事業者の方は早急な対応が必要となります。


 ここ、群馬県よろず支援拠点においてもご相談には応じておりますので、ご連絡をいただけたらと思います。

 

紙面の都合で、何一つ具体的な改正内容に触れられませんでした。次の機会が回ってくるころには新法も相当程度浸透しており今更な感じになるかもしれませんが、復習の意味も込めて改正点に触れてみたいと思います。
ということで、今日はこの辺で失礼します。

 コーディネーター 栗原 貴志