経営者の顔を映す「貸借対照表」

皆さん、こんにちは! 群馬県よろず支援拠点の笹尾(税理士)です。


私を含めた群馬県よろず支援拠点に席を置く税理士3名は、主にお金にまつわる経営相談に従事していますが、突っ込んだ経営相談の際には、必ず決算数値を拝見します。

 

事業の経営者が経営を進めるなかで、事業が上手く進んでいるかどうか確認することは必須であり、そのためには貨幣価値を表す「数値」でお金の流れを計測します。


そして「数値」によって計測された結果は、「損益計算書」と「貸借対照表」に集約されることとなります。

 

書籍等には、

「損益計算書」とは「一定期間の収益と費用の状態を示す」
「貸借対照表」とは「一定時点における財産の在り高を示す」

と記載されされていますが、これらの計算書類を作成するためのツールとして、「複式簿記」という記帳テクニックが用いられています。

 

企業は、その持てる財産(プラスの財産とマイナスの財産)を使って事業を行いますが、「複式簿記」を使えば一定期間にどれだけ儲かったかのか、それとも損をしたか、「貸借対照表」「損益計算書」のどちらの計算書類からでも求めることができます。

 

この2つの書類のうち、私たち専門家は「損益計算書」より「貸借対照表」を重視して、企業の財産状態をチェックしていきます。


なぜかというと、「貸借対照表」は「一定時点における財産の在り高」を表すもので、2つの時点の「貸借対照表」を見れば会社の財産を使って、一定期間、営業活動を行った結果、その財産の内容がどのように変わったかが分かるからです。


言い換えるならば、経営者がどのような考えのもと財産を変動させたかを知ることで、経営者の考え方・経営に対する姿勢等を「貸借対照表」から窺がい知ることができると言ってよいでしょう。


「貸借対照表」から窺がえる若干の例を掲げてみます(もちろん事業形態によって状況は異なります)。

 

(1)「管理に無頓着な」経営の典型
貸借対照表の「資産の部」に、未収金・貸付金・仮払金・投資有価証券等、実態がよくわからない科目が表れてくる。
数値の信ぴょう性が強く疑われることにもなる。

 

(2)「大きいことは良いことだ」経営の典型
貸借対照表の「資産の部」に、土地・建物の購入が計上され、同時に「負債」も急増する。会社の身なりは大きいが、中身は薄い。
借入金の返済(元金と利息)が多額に上ることが想定され、資金繰りも忙しくなる。
 
(3)「節税志向」経営の典型
過大な役員報酬や接待交際費等を払うことで会社を赤字にして法人税の支払いを最小限にする。

その代償として、負債である役員借入金が急増する。内部留保もほとんどない。

 

(4)「成り行き任せ」経営の典型   
何年も赤字続きであり、金融機関からの借入金が増加する一方である。
継続することに意味があるだけで、いずれ資金繰りに行き詰まる可能性がある。

 

   

上記の事例とは反対に、上手く経営が執り行われている企業の貸借対照表に共通している点には以下のような事項があります。

 

(1)現金預金が多く、未収金・貸付金・仮払金等の内容が不明な勘定がない。
(2)事業に不釣り合いな有形固定資産がない。
(3)内部留保(繰越利益剰余金)が積みあがっている。


一定時点の企業の財政状態を表す「貸借対照表」は1年で出来上がるものではなく、何年、何十年の経営の積み重ねの「結果」を現わすものです。

「貸借対照表」は経営者の経営手腕や経営に対する考え方を、無言ですが雄弁に物語ってくれます。

金融機関等も「貸借対照表」をみて経営者の人柄や考え方を判断しています。

 

群馬県よろず支援拠点
コーディネーター 笹尾 博樹