租税教室

  皆さんは「租税教室」をご存じでしょうか。

 

「租税教室」とは、児童・学生等が租税の役割を正しく理解できるよう、

各税務署内に設置された「租税教育推進協議会」(注1)が講師を派遣して、

各学校で開催される「租税教室」にて租税に関する話をするもので、

社会科の一環として、税務署職員、税理士、法人会に所属する法人の代表者等が講師を務めるものです。


群馬県内の開催状況(令和元年度)は小・中・高校を合計して
延開催567回、総参加人数は38,561人でした。(出典:税務署統計)


令和2年12月、私(COの笹尾)も中学3年生を対象に一コマ、租税教室の
講師を担当させて頂きました。その際に話した内容を箇条書きしたものを
以下に紹介させていただきます。


1.私たちはなぜ税金を払わなくてはいけないのか
  日本国憲法 第29条(財産権) 
        第30条(納税の義務) 
        第84条(租税法律主義)
2.租税の定義
  租税とは、国民に各種の公共サービスを提供することを
  目的に、このような資金の調達を目的として、直接の反対給付
  なしに、強制的に私人の手から国家の手に移される富の総称である。
  (金子宏著「租税法 第二十三版」 P.1)

3.租税の区分・種類(直接税・間接税、国税・地方税、
  各税目(所得税・法人税・消費税・相続税等)
4.児童・生徒等一人当たりの税金投入額
5.租税における「公平」(水平的公平性、垂直的公平性)
6.租税が決定される仕組み(租税法律主義、選挙と議会)
7.増大する社会保障費と消費税の役割
8.消費税率の国際比較
9.質疑応答

 

最後にどのような質問が出されたか、いくつか紹介します。

 

✓税金の使い道が公正で不正なものにならないように、誰がどのように、
どのような基準で(税金の使い道を)決めるのか。


✓脱税はどのような方法で、どの程度取り締まっているのか。


✓課税方法や課税率などは今後どのように変化すると考えられるか。

また、新型コロナウイルスはその変化にどの程度影響を与えるのか。


✓なぜ国の借金を後回しにするのか。


いい加減に回答できない質問のオンパレードです。

私が子供の頃(今から50年以上前)にはこのような「租税教室」はありませんでした。
児童や学生は租税とは全く関係ないと思われていたのかもしれません。


しかしながら、今の児童や生徒は立派な納税者であり、特に消費税率の国際比較では
敏感に反応します。また、国の借金は令和2年12月末で1,200兆円を超えました。(注2)


1980年では高齢者1人を6.6人の労働人口で支えてきたのが、2040年では
高齢者1人を1.4人で支えないといけないこと等を聞くと、彼ら・彼女らは、
「私たちの将来はいったいどうなってしまうのか」と不安を覚えるのだと思います。


租税教室の中では、道路建設や公共医療サービスの社会インフラ整備、防衛等の
公共サービスは全て租税で賄われていることを説明します。


新型コロナでは、売上が急減した事業者向けに
「持続化給付金」が支給されましたが、2月8日現在で、
中小企業・個人事業主併せて支給件数420万件、給付総額額5.5兆円とのことで(注3)、
これらは篤志の方の善意ではなく、全て租税で賄われました。「租税教室」では
持続化給付金には触れませんでしたが、これも間違いなく
国の借金に積み増しされました。

 

「お金がなければ何もできない」のが財政の世界です。
新型コロナの影響を受けて、令和2年分の所得税の確定申告期限が
昨年に続いて1か月延長されました。


我々、自営業者は年に一度のこの時期、税額を確定させます。
消費税や所得税に加えて、後日に賦課決定されてくる個人住民税
まで試算すると「こんなに払うのか」との「痛税感」を覚えることは確かですが、
「租税教室」に参加する若い世代にこれらのツケを後回しにしないよう、
我々自身の心の中でも「租税教室」を開催しなくては
ならないと思います。


租税教室にて使用する汎用テキストや動画等は
国税庁HPに掲載されています(注4)ので、是非ご覧になってください。

 

 

群馬県よろず支援拠点コーディネーター 笹尾 博樹

 

 

(注1) 国税庁HP  最終アクセス 令和3年2月8日
https://www.nta.go.jp/taxes/kids/sozei_kyoiku/index.htm

(注2) 財務省HP 最終アクセス 令和3年2月15日
https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/gbb/202012.html
(注3) 経済産業省HP 最終アクセス 令和3年2月15日
https://www.meti.go.jp/covid-19/jizokuka-info.html

(注4)国税庁HP  最終アクセス 令和3年2月8日
https://www.nta.go.jp/taxes/kids/index.htm