コロナ禍における解雇について

 

コロナ解雇、5万2千人超に増加 約77%が非正規労働者(共同通信 2020/09/08)

 

早期・希望退職1万人超=上場企業、コロナ禍で加速―東京商工リサーチ(時事通信 2020/09/16)

 

 この他にもあるかもしれませんが、雇用関係で目に留まった見出しです。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う業績悪化とこれによる雇用情勢への影響はまだまだ終わりが見えません。

 それどころか、年末には倒産・廃業が急増するという見通しが示されています。

(「倒産・廃業の予備軍多い」 年末ごろから急増の恐れも(朝日新聞デジタル 202009/14))

 

 業績悪化 → 経費削減 → 方策の1つとしての人件費抑制 → そのための人員削減 → 解雇という思考は、使用者であれば誰でもすぐに思い付くことでしょう。
 確かに、事業を継続するために解雇が必要となることはあるでしょう。ただ、その解雇は有効でしょうか?
 解雇によって労働者は一方的に労働契約を解約され生活の糧を奪われることになります。解雇は、このような重大な効果を伴うものであることから、立法や判例によって様々な規制がなされています。

 

 この場面での解雇は「整理解雇」と言われるものです。
解雇が有効と言えるには、当該解雇に「客観的に合理的な理由」があり「社会通念上相当」と認められる必要があります。(労働契約法16条。解雇権濫用法理)


 解雇権濫用法理は、整理解雇の場面では次の4要件を要求することになります。(ナショナルウエストミンスター銀行第1次仮処分事件、東京地決H10.1.7労判736号78頁など)
  ①人員削減の必要性
  ②解雇回避の努力
  ③人選の合理性
  ④説明協議等の手続きの妥当性


 整理解雇は、経営上の理由によるもので、労働者の落ち度によるものではありません。その有効性は通常の解雇よりも厳格に判断されます。
 経営状況を踏まえ(①)、経費の削減、労働時間の短縮、残業規制、昇給停止、賞与の削減、役員報酬の削減、採用停止、配転・出向、一時帰休、希望退職者の募集等を検討し(②)、対象となる労働者に対して説明・協議する必要があります(③、④)。


 このコロナ禍においては、雇用調整助成金の特例等の雇用維持支援策、資金繰り支援策、給付金、納税猶予等の様々な支援策が実施されています。これらについても十分に検討する必要があります(②)。

 

 経営悪化の場合の人員削減としては雇止めや内定取消しも考えられますが、整理解雇と同様、慎重な判断が必要となります。
 また、退職勧奨もその態様によっては解雇と同視されるのであり、やはり慎重な判断が必要となります。

 

 解雇をしたくて採用する人はいません。経営者・事業者の皆さんは、自社の業務を拡大し会社を発展させるために採用しているはずです。


  ここ群馬県よろず支援拠点は、中小企業・小規模事業者の経営のお悩みを解決する無料の相談所です。何かお困りごとがございましたら、お気軽にご連絡ください。一緒に問題を解決していきましょう。

 

最後に、渋沢栄一の言葉です。

「富をなす根源は何かといえば、仁義道徳。正しい道理の富でなければ、その富は完全に永続することができぬ。」
「できるだけ多くの人に、できるだけ多くの幸福を与えるように行動するのが、我々の義務である。」
 
            群馬県よろず支援拠点 コーディネーター 栗原貴志